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iemiru コラム vol.245

【一級建築士監修】HRCと呼ばれる高強度コンクリートとはどんなもの?様々な特徴と使用例などをご紹介!

高強度コンクリート(HRC)とは?

高強度コンクリート(以下、HRC)とは従来のコンクリートよりも圧縮強度が高く、近年増えている建物の大規模化や高層化を可能にしています。 HRCと言われるコンクリートの強度は、土木業界で使われる場合と建築業界で使われる場合では設計基準が異なり、土木では50~100N/mm平米のコンクリート、建築では設計強度が36N/mm平米を超えるコンクリートとされています。 日本でHRCが初めて使われたのは、1974年に建てられた18階建ての社宅です。当時、日本建築学会が定めていたコンクリートの設計基準強度を2倍以上上回る強度を持つコンクリートが使われ、これがHRCと言われるようになりました。

建物の構造種類

建物の構造種別には、木造、組積造、鉄骨造(S造)鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)そして高強度コンクリートを使った鉄筋コンクリート造(HRC造)といった様々な種類の構造があります。 それぞれの構造には特徴があり、建物の規模や用途、デザインなどによって最適な構造が選ばれます。

一般的なコンクリート住宅の構造は鉄筋コンクリート

一般的にコンクリートで作る住宅で採用される構造は、鉄筋コンクリート造です。鉄筋コンクリートはコンクリートの中に鉄筋を配筋して作られています。 コンクリートは圧縮に強く、引張りに弱い材料。鉄筋は引っ張りに強く、圧縮に弱い材料です。2つを組み合わせることで、お互いの長所と短所を補い、強度を向上させたのが鉄筋コンクリートです。 木造に比べると、耐震性能や耐火性能が高く、耐久性に優れています。また、型枠を使ってコンクリートを流し込むため、木造では難しい形状の建物デザインとすることができます。

HRCは、従来の鉄筋コンクリートよりも高性能

HRCは、耐久性の向上を目指して開発されているため、従来のコンクリートと比べて高性能です。 研究開発によって強度はもちろん、建物の長寿命化も可能にしています。また、新しい混和材料の採用などで性能が年々向上され、HRCを超える、「超高強度コンクリート」の製造も実現されました。

主に高層建築や大規模建築で活用されている

HRCによって、建物重量の軽量化が可能になり、高層建築物や大規模建築物が効率的につくることができるようになりました。 従来のコンクリートでは不可能だった高さ200mクラス級の高層ビルの建設を可能にしているのは、HRCの普及と施工技術の向上のおかげです。 また高強度コンクリートの開発・促進によって高層建築の他にも柱間を長くした大規模建築の建設にも活用されています。

従来の鉄筋コンクリート造の特徴

鉄筋コンクリート造は19世紀にフランスで製造技術が確立され、日本では明治時代以降に導入された構造技術です。 鉄筋コンクリート造は、耐久性・耐火性・遮音性・流動性・水密性といった優れた性能を持つ材料です。そのため、高層建築や大規模建築以外の建物、例えば住宅や10階以下の中低層マンションなど様々な用途の建築物に一般的に使われています。

鉄筋コンクリート造で建てられている住宅の寿命は早くて50年ほど

財務省による「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」で鉄筋コンクリート造の住宅の法定耐用年数は47年とされています。この法定耐用年数とはあくまでも税法上使われる数値ですが、建物が新築されてから取り壊されるまでの統計などから導き出されているため、現状に即した数値と言えます。 しかし、築47年経った鉄筋コンクリート造の住宅が、急に住めなくなるようなことはありません。鉄筋コンクリート造の住宅は、定期的なメンテナンスを続けると、構造耐力的に50年~100年持つとされています。 築50年程度で取り壊されるのは、建物自体の劣化よりも住宅設備や配管の老朽化が原因によるところが大きいのが現状です。

広い居住空間を作るのに向いておらず、高層建築にも向いていない

鉄筋コンクリート造で建物を建てる場合、構造様式は柱と梁で建物を支えるラーメン構造又は、壁で建物を支える壁構造のどちらかになります。 ラーメン構造の場合、柱と柱の間隔は5m~8m程度、柱のサイズは1片が50cm~60cmの程度の四角形となります。 そのため、広い空間を作ろうとすると部屋の中に柱が出てきてしまうことになります。また、壁構造にした場合も、一定の割合でバランスよく耐力壁を設ける必要があるため、耐力壁が部屋を横切る可能性が高くなります。このようなことから、鉄筋コンクリート造は広い空間を作るのに向いていません。 また、高層建築に関しては、耐震基準をクリアするために建物が高くなるほど下の階の構造躯体のサイズを大きくする必要があり不経済な建物になってしまうため、高層建築にも向いていません。

HRCの特徴とは?

HRCの特徴は、水分量が極端に少ないことです。 作業性が悪くなるというデメリットもありますが、従来のコンクリートに比べて強度が増したり、劣化を防いだりというプラスの効果を得ることができます。

HRCは、その名の通り頑丈なコンクリート

従来のコンクリートとHRCの作り方に違いはありませんが、水分量を少なくする配合や、化学混和剤を配合することによって高性能なコンクリートを作り出しています。 前述のとおり、HRCは、配合される水の量を抑えることでコンクリートの強度を高めています。水の量を少なくすると、コンクリートの中性化が抑制される効果があるため、鉄筋の劣化を防ぎ長持ちさせる効果が得られます。しかし、水分量を減らすとコンクリートの流動性が落ち施工が難しくなるという問題がでてきます。

単に水分を減らすのではなく、化学混和剤によって柔らかさと硬さを両立している

水分量を減らしても作業性能を確保することができるように、高性能AE減水剤が用いられています。 高性能AE減水剤は、外気温度やコンクリートの温度などに合わせて、使用する量を調整する必要があります。使用量を多くすれば流動性は高くなりますが、凝固に時間がかる傾向にあります。コンクリートは外気温度が低いと凝固するまでに時間がかかるので、冬場に施工する場合は、過剰に高性能AE減水剤を使わないようにする注意が必要です。 逆に、高性能AE減水剤が少ないと高強度コンクリートの流動性が悪くなり作業性能が悪くなるため、適切な使用量の判断が重要です。

建物の寿命を格段に長くできる

通常鉄筋コンクリート造の建物の劣化は、コンクリートの劣化と鉄筋の腐食が原因となっています。鉄筋が腐食すると錆びが発生し、膨張します。その結果、コンクリートに力が加わり、鉄筋に沿ってヒビが入ったり、コンクリートが剥離したりしてしまいます。 HRCは、水分量が少ないためコンクリートの中性化が抑えられます。そのため、コンクリート内に配筋されている鉄筋の腐食が抑制され、長寿命化の実現が可能になっています。

広くて開放感がある部屋が設計出来る

コンクリート自体の強度が高いため、柱と柱の間隔を通常よりも長くしたり、柱や梁の断面寸法をコンパクトにしたりすることができるため、広く開放感がある空間を作ることが可能です。 この特徴を活かして、高層建築以外にもホールなどの文化施設や屋内スポーツ競技施設などでもHRCが使われています。 また、構造上の制約が減るため、開口部の位置や大きさ、建物デザインの可能性を広げやすくなります。

地震の揺れにも強い

HRCは、高強度鉄筋を組み合わせたり、制震部材を用いたりすることで、より耐震性能を高めることができます。 また、通常HRCが使われる柱・梁と共に耐震壁にも活用することで、更に耐震性能の向上が期待できます。

HRCのデメリットは何?

強度が高いなど優れた点が多くあり、建物の高層化や大規模化には欠かせなくなったHRCですが、デメリットも持ち合わせています。 メリットを最大限に活かして有効活用する上でも、デメリットを知り、どんな点に注意が必要となるのかを知っておきましょう。

コストが高い

通常のコンクリートで施工する場合に比べてコストが高くなります。 材料費に加えて施工の難しさから施工費用のコストが高くなる傾向にあります。そのため、コンクリートを使う部分全てにHRCを使うとコストがかかりすぎるという問題が出てきます。 コスト削減の対策として、施工方法や使う場所の精査など、何らかの工夫が必要になります。施工会社の中には、高性能AE減水剤の使用量を減らすことができる混和剤を利用することで、材料費削減に繋げる工夫をしているところがあります。

コンクリート内部の気泡が少ないので、火災が起こると爆裂する可能性がある

通常のコンクリートは適度な気泡を含んでいて、水蒸気の逃げ場所が確保できているため、このような現象が起こる可能性は極めて低いとされています。 一方、HRCは気泡が少なく密度の高い作りになっています。 このような状態で火災が起きると、コンクリート内部の水分が気化・膨張し破裂する「爆裂」が起こります。爆裂によってコンクリートが破壊、構造強度が低下するという可能性があります。 この点に関しては、爆裂を防ぐためにポリプロピレンなどの繊維を混入させ、火災時に繊維が融解することでできる空洞を水蒸気の逃げ道として利用する方法や、HRCが使われている部分を鉄板やプレキャストコンクリートなどで耐火被覆して、高温になることを防ぐなどの対策が取られています。

土木建築におけるHRCの活用

前述のとおり、HRCは高層建築や大規模建築で使われることが多くありますが、その他にも、その強度や恒久性の高さから、トンネルや橋梁などの土木建築でも活用されています。また、プレキャストコンクリート(現場で組み立て・設置を行うために、工場などであらかじめ製造されたコンクリート製品を用いた工法)に使われることもあります。 土木建築で使われているHRCの設計基準強度は、高層建築などの建物で使われる強度よりも高く設定されています。

恒久性の向上

土木分野では社会的な要請として、安全性や恒久性がこれまで以上に求められています。特に海水や道路に撒かれる凍結防止剤に含まれる塩分によるコンクリート内部の鉄の腐食が問題視されています。 そもそもコンクリートは、「アルカリ性」で、この状態を保つことが望ましいのです。ゆえに、「酸性」へ傾く(コンクリートの中性化)ことは、劣化の大きな原因の一つになってしまいます。 HRCは密実に作られているため二酸化炭素,塩化物イオンなどの劣化因子が内部に侵入することによる中性化を起こしにくく、塩害の影響を受けにくい材料です。そのため、鉄筋の腐食を防止することができることでトンネルや橋梁などの恒久性を高め長寿命化を可能とすることで、ライフサイクルコストの低減に繋げています。

意匠面の自由度が高くなる

橋梁を例にすると、高強度コンクリートの強度が高いことで断面寸法を小さくすることができるため、今までにない軽量で軽やかな印象のデザインが可能になります。 このように、これまでの常識では難しかった建設が可能になるのが高強度コンクリートの魅力の一つと言えます。

HRCの可能性

HRCは、その強度や性能の高さから今まで不可能とされていたスケールの高層建築や大規模建築の建築が可能になったことが最大のメリットです。 今後の開発で、施工の省力化や合理化又、軽量化などが進み、多くの利用が見込まれています。

長寿命な建物を目指す

高層建築や大規模建築は一度作ってしまうと簡単に取り壊しができない建物です。そのため、社会の要望として安心して使い続けられる長寿命な建物が求められています。 HRCは密実にできているため劣化しにくく恒久性に優れているため、社会のニーズに合った材料と言えます。

【監修】榑林 宏之(一級建築士)

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