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iemiru コラム vol.246

【一級建築士監修】揮発性有機化合物(VOC)って何?知っておくべきシックハウス症候群の対策

揮発性有機化合物(VOC)とは?

揮発性有機化合物(以下、VOC)は、揮発性を有しており、大気中で気体状となる有機化合物の総称です。 そして、このVOCには「大気汚染物質」、「生産に関連して発生する物質」、「シックハウスの対象物質」の3つの要素が存在しています。

様々な規制の対象となっている

VOCは、大気中の濃度が一定の数値以上になると人体に悪影響が出る可能性が高いため、濃度を一定の数値以下に抑えることが重要とされています。しかし、基準濃度よりも低い数値であっても、身体的な悪影響を感じる人はいます。 光化学スモッグなどの大気汚染やシックハウスなどの室内空気汚染を防止するため、「大気汚染防止法」ではVOCの排出基準を設け、法令遵守を義務付けています。 また、「大気汚染防止法」だけではなく、「建築基準法」など様々な視点からも規制対象となっています。

建材の他にも幅広い用途で使われている

VOCは揮発しやすく、油に馴染みやすいです。 そのため、プラスチックや化学繊維の乾燥、金属製品の洗浄、パッケージの印刷など様々な分野で使われています。 VOCの排出は、塗料、インク、洗浄剤、接着剤からの排出量が全体の75%を占めていて、これらの製品を使う業種からの排出量が多くなっています。 これらの作業を行う大規模な工場や施設は規制対象施設として定められています。対象外の施設に関しても、自主的に排出抑制を行うように定められています。

シックハウス症候群の代表的な原因物質でもある

居住者や施設の利用者が原因不明の様々な体調不良を感じることがあります。そんな症状の一部は室内環境に由来するものだと考えられており、「シックハウス症候群」と呼ばれています。 厚生労働省室内空気質健康影響研究会では、「居住者の健康を維持するという観点から問題のある住宅において見られる健康被害の総称」の用語として「シックハウス症候群」という言葉を用いています。 シックハウス症候群を生じさせる室内要因としては化学的因子、生物的因子、物理的因子などの様々な要素があげられます。化学的因子としては、VOC、タバコの煙、暖房器具などの排ガスなどがあります。 2003に国土交通省はそれまでの建築基準法を改正して、建材からのホルムアルデヒドの放散量の規制や及び換気設備設置の義務化などの法整備を行い、改正建築基準法を施工しました。また、室内空気汚染の原因物質とされるVOCの中でも、揮発性が高く、健康リスクが高い13物質についてのガイドラインを設定しました(厚生労働省 シックハウス(室内空気汚染)揮発性有機化合物(VOC)室内濃度指針値)。 「シックハウス症候群」の原因とされる室内空気汚染について、改善対策を進めることを目的としたものです。

VOCは、人体にどんな影響を及ぼすのか?

VOCによって人体が影響を受けると、私達の体に身体症状として影響が表れます。その身体症状には、様々なものが存在しており、その大半がきちんと治療が可能なものが含まれています。 主な症状例は、目がチカチカする・鼻水が出る・喉が渇く・咳が出る・肌に発疹が出る・疲れやすくなる・頭痛がする・眩暈がするなど、全身に渡って様々な症状があらわれ体調不良を起こす場合があります。 他にも、中枢神経への影響や肝機能障害、発がん性のリスクがあるとも言われています。 誤飲、吸引、接触などでVOCが体内に取り込まれると、たとえ接触した時間が短時間であっても発がんのリスクが高まります。

VOCにはどんな種類があるの?

私達は、5万種類以上の化学物質が製品や食品などに活用されている環境で生活し、日常的に化学物質と接しています。その中でもVOCは、建築資材や家具などで使われているため、建物内でも空気中に存在しています。 このように身近に存在しているVOCの代表的な物質を紹介していきます。それぞれに特徴があり、厚生労働省が定めている室内濃度指針値が物質ごとに定められています。

ホルムアルデヒド

よく知られているのがホルムアルデヒドです。ホルムアルデヒドはメタノールを空気酸化して作られ、無色で刺激臭のある気体です。目や鼻に刺激を受けやすい物質です。 水やアルコールに溶けやすいことや、コストが低いなどの理由で、接着剤や塗料、防腐剤として幅広く使われていましたが、2003年7月1日より改正建築基準法によって、「シックハウス対策」が義務づけられ、建築資材でのホルムアルデヒドの使用が制限されて以降は、ほとんど使用されなくなりました。これは住宅の気密性が向上し、室内の空気が汚染されやすくなったため、規制を設けて健康被害を防止することを目的としています。

ベンゼン

ベンゼンは原油に含まれていて、無色でガソリンのような臭いを持ち、引火性の高い液体です。呼吸や皮膚からの吸収で体内に取り込まれます。 水にはほとんど溶けず、合成樹脂や合成繊維などの原料として用いられています。 人によっては、吐き気や眩暈などの症状が現れることがあります。

トルエン

メチルベンゼンとも呼ばれるトルエンは、無色透明な液体です。強い刺激臭があり、いわゆるシンナーの臭いの元となっています。 水には溶けにくいですが、アルコールや油などには非常に溶けやすく、油性のペイントやラッカー、ニス、防腐剤、接着剤といった製品に使われています。 皮膚への刺激や臓器の障害、ひどい場合には意識低下などを引き起こすことがあります。

クロルピリホス

クロルピリホスは有機リン化合物で、常温では無色か白色の結晶です。水には溶けにくい物質です。 以前は防蟻剤としてシロアリ駆除に使われていましたが、2003年建築基準法により、居室を有する建物でのクロルピリホスが含まれた建材の使用は禁止されました。 倦怠感や頭痛、眩暈を感じ、ひどい場合にはけいれん等の神経障害を引き起こす可能性があります。

VOCとシックハウス症候群

シックハウス症候群とは前述したように、居住者や施設を利用した人が、室内環境が由来していると思われる原因不明の体調不良を引き起こすことを言います。 自宅や会社など、普段長時間滞在している建物から離れると症状がなく、もしくは軽減される場合は、室内環境が影響していると考えられます。

住宅の気密性が高まるほどに危険性が増す

シックハウス症候群によって様々な体調不良が起きるのは、VOCの濃度が影響しています。VOCの濃度が高いほど人体に与える影響は大きくなる傾向にあります。 そのため国は、基準値の設定や防止対策などで総合的にシックハウスの対策を行っています。 昔の住宅は、今と比べて気密性が高くなかったため、窓を締め切っていても隙間風が通り、常に建物内の空気が循環される状態にあったため、VOCが使われていたとしても室内の空気が汚染されるリスクが低い環境でした。 一方、近年の気密性の高い住宅は、自主的に換気を行わないと室内の空気が循環されない状況にあり、換気を行っていない住宅内では空気が汚染されるリスクが高くなっていました。そこで2003年の改正建築基準法で義務付けられたのが、「24時間換気システム」の設置です。

建築基準法によるシックハウス症候群対策

住宅や施設など建物のシックハウス対策としては、建築基準法において、ホルムアルデヒドの濃度を規制しています。 また、建築基準法では居室の種類と換気回数によって、ホルムアルデヒドが発散される内装材の使用面積が決められています。 ホルムアルデヒドを含む建材は、JIS、JAS又は、大臣認定を受けたものに限られ、星の数によって4段階の等級に分けられ、ホルムアルデヒドの発散量が少ないほど星の数が多くなります。 よって、発散量が少ない建材ほど多くの面積で使えることになります。 さらに、常時換気できる設備の設置が義務付けられています。ホルムアルデヒドが使われていない住宅を建てたとしても、家具などからホルムアルデヒドが発散される可能性があります。そのため、24時間365日換気できることが求められます。 居室以外の部分でも対策が必要になり、3つの対策のうちどれか1つを選択する必要があります。 ①天井裏、床下、収納部分では、ホルムアルデヒドの発散が少ない星の数が4つ付いたF☆☆☆☆ の建材を使う ②居室へホルムアルデヒドが流入しないように区画する ③天井裏や床下なども換気可能な設備を設ける

住宅性能表示制度も参考にする

住宅性能表示制度とは、平成12年4月1日に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づく制度です。10分野の指標で住宅を評価するのですが、その中には、シックハウス対策・換気(空気環境)という項目もあります。新築住宅の場合、建材の選定と換気対策 の2つがどのようにされているか、住宅の完成段階で室内の化学物質の濃度の実測結果がどの程度であったのかを第三者機関が評価します。

VOCを知って、安心安全な暮らしを

ここまでで、VOCとシックハウス症候群について説明してきました。 専門的な内容も多く、全て理解するのは難しいかもしれません。 そこで最後に、これだけは覚えておいて欲しい「家づくりにおけるVOC対策」をご紹介します。

化学物質を含まない自然素材

国が使用の制限を設けているのは、ホルムアルデヒドの規制とクロルピリホスの使用禁止のみです。VOCにはこの他にも多くの化学物質が存在するため、特定の化学物質が使われていないことに注目するのではなく、全体的に化学物質ができるだけ使われていない建材を選ぶようにしましょう。 また、VOCを吸収してくれる自然素材もあります。代表的なものは漆喰で、他にもウールを使った断熱材や、サンゴを原料とした塗り壁材をなどがあります。 ただし、壁の仕上げを漆喰にしたりフローリングに無垢材を使ったりなどで、VOCが含まれた建材をできるだけ使わずに住宅を建てたとしても、完全にシックハウス症候群にならないというわけではありません。 VOCは建材以外にも様々な場面で使われているため、知らず知らずのうちに発散されている可能性があるからです。シックハウス症候群にかかるリスクを減らすためには、普段使うものにも注意が必要です。

とにかく換気

入居前にできるだけ頻繁に換気を行いましょう。 具体的には、「①室内の温度を30℃以上に上げる」、「②換気を行う」、この①と②を何度か繰り返します。 これを「ベイクアウト」といい、温度が上がると放散が促進されるというVOCの性質を利用した換気方法です。 もちろん、入居後も特に最初の1ヶ月は換気をしっかりとすることをおすすめします。 ゆえに、引き渡しの時期は、換気しても快適な秋口が最適かもしれません。 できる対策を十分に取り、安心安全な暮らしを作っていきましょう。

【監修】榑林 宏之(一級建築士)

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